連絡船は遭難信号を出す

1/5
前へ
/59ページ
次へ

連絡船は遭難信号を出す

「あれ……何これ?」  最初は、ただの「?」だった。きっと、何か『手順とかを間違えた』とか『インターロックが働いた』とかそういう類のものだろうと。  幸い船内照明は生きている。制御回路を介さずにバッテリーから直接に電源を取っているからだ。  もしや。  思い直してユーナはドッキング・ベイに戻った。ハッチが『半開き』になっているとか、そういうミスが無かったか確認するためだ。だが、何も問題は無いようだ。 「違ったか。じゃぁ、貨物室かな?」  宇宙船の場合、大量の荷物を『降ろして』しまうと、そこに生まれる空間に空気を取られてしまう事で『船内全体の空気濃度が低下してしまう』という地球では考えられない問題が生じる。  そのため、隙間が多い貨物室を開ける場合は他の居住区から空気を送り込み、逆に貨物室を閉めた場合には、そこから空気を抜いて居住区に戻す必要があるのだ。  なので、貨物室の扉が完全に閉まっていないと空気が送り込めないのだが……。 「うーん。チャンと閉まってるなぁ」  首を捻りながら、ユーナが操縦席に戻る。そして再び操作電源スイッチを入れ直すが……やはり、電源は入らなかった。     
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加