連絡船は遭難信号を出す

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「え……まさか……『壊れた』とか……?」  ユーナは全身に鳥肌が立つ感覚に襲われた。  微かに手が震える。背中に血が集まり、体温が肩甲骨の辺りだけ高くなっているのが分かる。  此処は地球から遥か7.8億kmの彼方だ。『もしも』となれば救助を要請したとしても、やって来るのは半年以上も先になってしまう。 「ヤバイな」  焦りを感じながら、ユーナは機器のスイッチ類を確認して廻る。だが、やはりおかしな処は見つからない。 「参ったぞ……」  ダッシュボードを開けて緊急対処マニュアルを取り出す。 「電源が入らない場合……と」  パラパラとページをめくるが、電源のインターロックに関する記述は見当たらなかった。後は、極めて専門的な回路の確認だけだ。 「しまったな。先輩はエウロパに置いて来たし……」  地球から一緒に来たコージ先輩なら多少なりと技術的に詳しかったと思うが、エウロパでは助けを求める事も出来ないのだ。  こうなったら仕方ない。あまり気は進まないが、タローに助けを求めるのがベターな方法であろう。ユーナは踵を返してドッキング・ベイに向かった。     
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