星の灯台に宅配便来たる

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星の灯台に宅配便来たる

 『物好き』と言われる人種は何時の時代にも居るものだ、とユーナは思う。  何しろ、今から訪れようとする『その人物』は木星の周囲を廻る小さな衛星に設置された『宇宙灯台』に独りで何年も住み続けているという『変人』なのだから。  『宇宙灯台』は太陽系内に数多く存在する電波発信施設である。資源採掘や観光を目的に太陽系の惑星を行き来する惑星間連絡船にとって、己の位置関係を正確に把握するためには宇宙灯台が発する信号は必要不可欠なものだ。  それらの大半は人工衛星のように自動制御されていて人間が介在することはない。単に電波を発信するだけなら人手は必要ないし、人間が居住するための設備には、生命維持も含めて大きなコストが掛かるからだ。  だが稀に、そうした宇宙灯台に人間が滞在して管理しているケースがある。  これは天体の観測や、惑星間連絡船に事故が生じた場合にイチ早く状況を確認して地球に情報を伝達するといった特殊任務を担うためなのだ。  当然だが、その職務は孤独との戦いであると言っていい。だから、世間では彼らの事を『現代の世捨て人』とか『孤独主義者』などと呼んでいた。     
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