心構えと現実と

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心構えと現実と

 月基地から救援の連絡が来たのは、それから暫くしてからだった。 「至急に用意するが、出航まで半日ほど時間掛かる」との事である。何しろ月から此処までは最低でも6ヶ月は掛かる。救援隊とて燃料の積み込みや船の点検整備、または水や食料の準備等々、それなりに準備しないといけないのだ。  『運が悪かった』と言えばそうかも知れない。これがエウロパなどに別の貨物便が来ていたりすれば『帰りに拾ってもらう』事も出来ようというものだが、生憎と近くにそれらしい船が一隻も出ていなかったのだ。  エウロパに『残してきた』形になったコージ先輩には、後からユーナ自身から連絡をとった。「申し訳ありません」と謝り、コージ先輩も「お前のせいじゃない」とフォローしてくれたが、流石の彼もその声に落胆の色は隠せていなかった。  会社には、タローが連絡を入れてくれた。  コズミック運輸の社長はタローと長年の付き合いらしい。忙しい折りに『船が使えなくなった』ことで相当に落ち込んで居たらしいが、「とにかく、ユーナちゃんが無事なら、それで良い」と言っていたと聞いた。  さてそうなると、だ。  ユーナとしては、後は唯ひたすらに『6ヶ月間、ここで待つ』しかない。     
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