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見た事のある男の子が公園に入ってきて、私を見ていきなりそんなことを言い出した。
ええっと、誰だっけ……。
私が悩んでいると、男の子ははあと大きくため息をついて、私を睨むように見た。
「坂本しゅんや。転校生だよ。お前の隣だろ」
「あ、えっと……す、すみません」
私は慌てて頭を下げる。
一対一で話すのは苦手だ。しかも、男の子。
しゅんやくんは、みんなに格好いいと言われるほどのイケメンだけど、すごく目付きが悪いので、睨まれているようで怖い……。
無言が続いて、嫌になる。
逃げ出そうとした時、しゅんやくんが口を開いた。
「あんたも、桜好きなのか?」
「へ? あ、はい!」
「そっか、俺もなんだ」
初めてしゅんやくんが見せた優しい笑顔に、私は少しきゅんとしてしまう。イケメンは罪だ。
「ここ、綺麗だな」
「……私のお気に入りなんです」
自分から自分のことを話すのは嫌いなのに、なぜか言っていた。不思議だ。全然緊張がなくなった。
「景色、綺麗だもんな」
「夕焼けとか、オススメですよ」
「なあ、俺もここで見てていいか?」
「全然いいですよ」
そう言って、私は鞄を持って立ち去ろうとする。
けど、なぜかしゅんやくんは私の腕を掴んでそれを制した。
「なあ、一緒に見ようぜ。お前も好きなんだろ?」
「え、ええっと……いいんですか?」
「ああ。お前は普通の女だし。べつに邪魔じゃない」
ということは、他の女子は邪魔ということか。
おそらく、しゅんやくんはモテるから、それ目的で近付いてくる人が多いんだろうな。
モテるのも大変だな。
それから私達は1時間くらいずっと話しながら桜を見続けた。
不思議なくらいに、しゅんやくんの隣は安心した。
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