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もしも。
その日以来。私達は2人で毎日のように公園に桜を見に来ていた。
桜が散った5月でも、一緒に景色を見ながら話していた。
それがなぜか、私にとって幸せな時間だった。
「なあ、さき」
「どうしたんですか?」
「なんでずっと敬語なんだよ」
痛いところをつかれてしまった。
私は嘘をつくのが下手なので、素直に打ち明けた。
「私、人見知りで……」
「人見知りって。俺にはしなくて大丈夫だろ」
「でも、抜けないんですよね」
「じゃあ、慣らしてやる」
「へっ?」
しゅんやくんは、そう言って不敵に笑った。
するといきなり、私の頭の上にぽんと大きな手を置いた。
「大丈夫だ。俺も昔はそうだった。人は変われる」
その優しい声に、私は少し泣きそうになった。
そして、初めて他人に自分の夢を話した。
「……私、実は教師になりたいんです。でも、人見知りで、できるはずなくて……」
「できるはずないとか、決めつけんなよ」
しゅんやくんは強かった。
私とは違くて、しっかりしていて、夢と希望に向かって突き進むような人だった。
だから、私はすごく彼に惹かれた。
「……私にできるでしょうか?」
私は不安げな声で、小さく問いかける。
すると、彼は優しく笑って言う。
「できる。お前なら」
「……ありがとう」
私は久しぶりに笑えた気がした。
ありがとう。
私はもう一度心の中で言った。
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