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   今日は、お父さんの誕生日だ。  だから私は、ずっと言えなかったことを今日こそ言おうと思っていた。「あの日は、ごめんなさい。」って…。  そう決意したはいいものの、私は未だにお風呂から上がれずにいた。  41度と、お父さんの年齢と同じ温度の湯船の中で、「今日こそ言おう!」「いや、やっぱりまた今度…」と葛藤し続けてかれこれ一時間になる。  もともとお風呂が大好きで長風呂派の私だけれど、流石にのぼせ気味になってきて、指先はすっかりふやけているし、換気扇のタイマーは切れてお風呂内は私の心を映し出しているかのようにモヤモヤだ。 「ユズー。起きてるー?」  いつまでもお風呂から出てこない私にお母さんが呼びかけてきた。高校で水泳部に所属している私は練習で疲れて帰ってくると度々お風呂で寝てしまうことがあったから、今回も寝てしまったと思ったのかもしれない。 「起きてるよー」  そう返事しながら、そう言えば何か考える時はいつもお風呂だな、と私は思う。友達関係で悩んだり、好きな子のことを想ったり、試合で負けて涙を流したり、一日の自分を反省したり…。  そう思えばこの浴槽は私の思い出の宝箱だった。浮き上がってくる小さな水泡の一つ一つに思い出が詰まっているような気がしてくる。もちろん、お父さんとの思い出も。  
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