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さてどうしよう。
残ったのはどうやら俺だけらしい。
今の時点でもすべき事は山ほどあるんだが、なにぶん解っていることの方が少ない。
酸素の残量を確かめながら、手近にあるものの確認から始めていった。
西暦2222年2月22日。
覚えめでたく2の字がずらりと並んだこの日こそが、世界初の都市型宇宙ステーション「コロナ」の記念すべき稼働初日になるはずだった。
事故が起こったせいで実際にはそうならなかったけど、本格稼働する前に事故が起きて、大きな被害が出なかったことだけが不幸中の幸いかな。
最も俺自身はガッツリ事故に巻き込まれてますが。
どうしてこうなったかなんて事は、一労働者たる自分には解らないが、気がついたときには周りに誰もいなかったとそういうわけだ。
いやまぁ、この状況に至るまでの過程に心当たりが無いわけでもない。
事故があったと思われる時間帯に、俺は同僚数人と中央坑道で鉱石の採掘調査を行っていた。
この宇宙ステーションの中央にある、でっかい隕石な。
重力のない狭いところで重機を使用してると上下左右、昼夜も含めて感覚がおかしくなって来る。
だからまぁ、二三時間ごとに交代するんだけど、その日は多分運が悪かったんだろうな。
誰かがなんかのはずみで、掘り当てちゃったんだろう。
氷を。
ショックを与えたせいでいっちゃったんだろうな、ブシューっと。
そっからは、速かったのなんの。
宇宙服越しにも鳴り響くけたたましいアラートのせいで、誰が何を言っているのかわかりゃしない。
氷塊かなにかがどこかにぶつかって、とんでもないことになりかけているのはなんとか聞き取れた。
そんな事が起こっているにもかかわらず、自分は何もできなかった。
なんせ坑道の中が暴風雨状態。
何人か宇宙に投げ出されたらしいが、目で追うことも出来なかった。
水蒸気が吹き出す端から纏わり付いて、すぐさま凍っていくんだもん。
なんとか氷の塊の中に組み込まれる前に坑道から脱出したものの、休憩室に戻る以外何もできなかったね。
こうなったらどうしようもない。
こっちも下手に動けない。
嵐がおさまるのを待つしかない。
そう思って、休憩室で避難していたら宇宙に一人取り残されました。
大島クルス天馬。
二十二歳独身。
辛すぎる童貞ロビンソンクルーソー、宇宙漂流記の始まりですバカヤロー!
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