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「くたくたの敬吾さんも可愛かったですけどー、ご奉仕するのも大好きなんですけどー、やっぱ俺も気持ちよくはなりたいのでね?」
「げっほ……っおい黙れ、何言って」
「敬吾さん、俺の指とか噛んじゃって超かわいいのに無茶できなくて俺消化不良もいいとこです」
「!!?なんだそれそんなことしてな」
「しましたー。子猫みたいに俺の指吸ってましたー。寝顔見ながら抜いてやろーと思ったのにまースヤッスヤ寝てるからそれもできなくてー」
「それはお前の勝手だろっ」
「だから明日はがっつり激しいのに付き合ってもらいますよーって話ですー。明後日休みでしょ?」
「やす、みだけどなにおまえ次の日まで気にしてん」
「寝かす気ないですもん」
間延びした口調から一転、ばっさりと言い切られて敬吾は口を開けたまま沈黙した。
キムチのせいと言わず酒のせいと言わず赤かった顔もさっと色が引く。
「…………え、えっと、待て……、落ち着け」
「落ち着いてますよー。だから今すぐじゃなくて明日っつってるんです」
「…………………」
うどんが焼き付かないよう鍋底を菜箸でさらいながら、逸は真っ直ぐに敬吾を見た。
「今日は敬吾さんもまだ疲れてますしね。ゆっくり寝て下さい」
「…………い、いやいやいやいや……………」
「敬吾さん」
静かに取皿を置いた敬吾の手を、テーブルの向かい側から逸が握る。
逸の手の中で面白いほどに敬吾が引きつった。
恐る恐る掬い上げるように見た逸の顔は、ごく朗らかに笑っている。
「俺は、敬吾さんのお世話するの大好きですよ。こうやって元気になってくれたり癒やされてたらすげー嬉しい」
「ーーう、うん……………」
「でも敬吾さんに元気にしてもらうのも大好きです、って言うか敬吾さん関係じゃないと俺元気にならないから」
「ーーーーーーー」
「よろしくお願いしまーす」
「………………っ!!!!!」
敏腕営業マンのように、心のこもったプレゼンと笑顔で逸は押し売りに成功した。
イエスともノーとも言わないが、敬吾はただ真っ赤になって意地のように下を向いている。
「つーかっ……………!!お前が元気とか言うとなんかさあ…………!!!」
「いやもう、いいですけどねそっちの意味でも」
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