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にこにこと逸に向かって桜が言い、逸はやはり少々展開について行けていない様子で頷いたりなどしている。
敬吾は笑いを堪えるのに必死であった。
「いっちーは食べる方?」
これは、敬吾に向かって聞く。
「食う食う、かなり食うこいつは」
「よっしゃ頼むぞー」
言うなり桜はメニューを持って席を立ち、カウンターに身を乗り出してなにやら注文しだした。
向こうも心得たものでそのまま注文を受けている。
隣から桜がいなくなったことでふと気が抜けたらしい逸を、楽しげに笑った敬吾が掬うように見上げた。
「やー、気に入られたなあ」
「ほんっとに」
河野も同意し、二人が頷きあうのを逸は更に混乱しながら見やっている。
「考えてみたらお前姉貴のどストライクだった」
「えぇ……?」
「構いたがりなんだよ。気に入った人間はいじりたがるし食わせたがるし」
「構い……たがり………?」
敬吾と血を分けているのに?
本気でそう思い、未だ口を半開きにしている逸を敬吾は更に楽しげに見つめた。
そこへ、桜が戻ってくる。
「はいはいドリンクだけ先もらってきたよー!あとは出来るのから作ってくれるからねー」
またも桜に度肝を抜かれている逸に、敬吾は意地悪げに笑いかけた。
「ご愁傷さま。」
「ええ………」
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