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「ええっと……はい、俺はゲイですね……」
頬を引きつらせながら逸が白状すると、その内側にある何倍もの苦悩には気づく由もなく桜がけろりと微笑んだ。
「やっぱりー?女の子泣くねー!」
ぱんぱんと逸の二の腕を叩く桜に、逸が懇願するように正面から顔を見合わせる。
「ーーあの、でもーー俺は、そうなんですけどっ、」
ーーなんと言えば良いのか。
迷子の子供のような、それを探す親のような複雑な表情をする逸を、それでも桜はきょとんと不思議そうに見返している。
「……………えーっともしかして、」
その唇がぽかりと開いて、逸が悲痛に目を細めた。
「ーーーーー敬吾?」
頭の芯が痺れるようで、何も考えられなくなった。
桜はまだ、勘ぐりも雑念もないような顔をしている。
そして、逸の二の腕に激痛と言っていいような衝撃が走った。
「いっーーーー、」
「なぁんだー!もー、言ってよー!」
「い、いやいやいやいや…………」
「いけると思うよー?」
「えっ?」
さっき叩いた二の腕を撫でながら、桜は本日一番の、まさしく花が咲いたような笑顔を逸に向けている。
「敬吾、好きでもない人間と二人っきりで車になんか乗んないから!いっちー押して!超押して!」
「あっ、あっはいーー!」
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