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「お帰りなさーい」
「たらいまー」
「あら……呂律が」
見た目より酔っているのだろうか。
水と手拭きを持って子供のように歩いて行く敬吾を追い、手拭きを差し出した。
「結構酔ってます?」
「んや?そーでもない」
「水飲んでくださいねー」
「んー、ビールあったっけか」
「えー」
行儀の良いことに手拭きを片付けに行った帰り、敬吾は冷蔵庫を開けた。
また間の悪いことにビールが2本鎮座している。
それを気持ちよく開けて大きく煽る敬吾を、困ったように逸は見守る。
「何か作りましょうか?つまみ」
「んー、いいいい、結構食ってきた」
「そうですか」
気分良さそうな敬吾の頭を撫でてやると、更に目元を緩ませて逸の手に擦り寄った。
逸が笑って猫でも撫でるように両手で頬だ首だと撫で擦ると、少々くすぐったそうに眉根を寄せて肩を縮める。
「んー、」
「あはは、水も飲んでくださいね」
「んん」
「俺ちょっと皿洗ってきます」
「えー」
「えー?」
「まあいいけど」
良く分からない難色と良く分からない許容があり、考えても仕方がないので逸は敬吾の額に唇をつけてから皿を洗いに立った。
リビングに戻ると、敬吾は変わらずベッドに背を預けて座っている。
そして逸の方を見上げると、傍らのベッドをぱんぱんと叩いた。
「?」
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