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人一倍求められやすい責任感だとか効率だとか、そういった「きちんとしたもの」を放り出して、こんな風にだらけて、子供のように拗ねたり怒ったりわがままを言ったりする。
惜しげもなく乱れたり、不躾なほど淫らに逸の体に触れることもある。
どれひとつ取ってもきっと、見たことのある人間は少ないのではないだろうかーー
そこまで曝け出してくれる理由は、なんなのだろうか。
すっかり理性の目が曇っている今なら、応えてくれるかもしれない。
「なんで……かー……」
とは言えやはり真面目に考えていてくれたらしい。
逸は少し笑って敬吾の肩に湯を掛ける。
「すみません、変なこと聞いて」
「んー……。」
敬吾がやや苦々しく唸った。
「…………顔だな……」
「え、顔?」
ーーそんなに好みだったとは露ほども思っていなかった。
そんなにも、異性愛者の垣根も越えさせるほどに?
驚いたように瞬きながら逸は難しげにうなずく敬吾のうなじを眺める。
「んー、顔……。すーげえもう、捨て犬みてーな顔してたろ……」
「あー、表情って意味ですか」
腑に落ちた様に逸が言うと、敬吾がまたちゃぷりと頷く。
「あれ見捨てたら……寝覚め悪くてしょーがねーよ」
「あーー………」
「くっそゴリゴリに押してたくせにいきなりあの顔で諦めますとか言われたらさあ……えっ俺が悪いのかこれってなるぞ……」
「なるほど」
逸は苦笑してしまった。
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