褒めて伸ばして

4/24
6715人が本棚に入れています
本棚に追加
/1199ページ
何事か諦めたようなため息をつく敬吾に、逸は恐る恐る問いかけた。 敬吾の鋭い視線が返ってきて思わず姿勢を正す。 「ーーもし良い子出来たらご褒美をやる。」 「!」 ぴょこんと正座した逸が可愛らしかったが、敬吾はなんとか喉元で微笑みを殺してやった。 「ご褒美!って………!!?」 そんなもの敬吾も考えていない。 「なんか好きなの言ってみろ、それに応じて期間を設定する」 「なるほど」 得心が行ったように瞬きをして、逸は考え始めた。 思いの外乗り気なようで敬吾は安心する。 「ハイ」 逸が挙手した。岩井くん、と敬吾が促してやる。 「青か……」 「50年。お前ぶっ殺すぞ」 「オナニー見せてくだ」 「30年。お前さあ、焼肉おごれとかそーゆーこと言えねーの?」 「そんなもん、むしろ俺おごりますからさせて下さいよ」 「……破綻しすぎだろ」 やはり罰は無意味だったかと再確認して敬吾は腕組みし、また考え込む逸を見下ろした。 「…………じゃああの、コスプレ………とかは」 「………………。着るだけ?」 「や、プレイ……」 敬吾が盛大にため息をつく。 「………………ものによる。」 「じょ、女装ーー」 「っはーーーー…………。具体的に」 呆れたように敬吾が言うと、逸は品定めでもするような視線で敬吾を炙った。 口元に手を宛てがい、唇をなぞりながら。 敬吾は背中が冷えるのを感じていた。 「……普通の、OLさんみたいなかっこでいいです。綺麗系の」 「ーーーーーー」 逸の声が低く掠れている。 これはもう、とっくに欲情していて、その頭の中ではきっとその格好をした自分が好きにされているーーー。
/1199ページ

最初のコメントを投稿しよう!