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その視線が耐え難く、逃げるように敬吾がシーツの皺を睨んでいると逸が敬吾を呼んだ。
「ーーー!?」
「何日ですか」
「え…………、っあ、」
すっかり狼狽えてしまった敬吾が勘案するのを、逸はやはり熱で底光りする瞳で追っていた。
「じゃ、じゃあ五週間」
「長いですよ」
「長くねーーよ女装だぞ!ほんとは二ヶ月くらいだ、嫌なら他のにしろよ」
「もう駄目です想像しちゃったんで。期待しまくってるんですから」
「……知るかよ……………」
「敬吾さん、三週間は?」
「ダメだ、じゃあ四週間」
「でも………」
声は未だ肉食獣のような獰猛さのまま、逸はふいと寂しげに下を向いた。
敬吾の視線もそれを追う。
「ーーそしたら俺、敬吾さんにひどいことしちゃうかもしれない………………」
「ーーーーーーーー」
呆気にとられて、敬吾はぽかりと顎を落とした。
それをちらりと流し見た逸の目が、生意気でーーーー
「てめっ脅す気かよ!」
「まさか。だって危ないじゃないですか……」
「ーーーー」
本当にそう思っているのかもしれないが、こうも欲情しきった目で睨めつけられていては敬吾としては慇懃無礼、いや、不平等な裏取引でも突きつけられているようにしか感じなかった。
だが、逸の本意はどうであれそろそろここらが落としどころだ。
締め上げ過ぎるのも、結局痛い目を見る。
敬吾がまたため息をついた。
「ーーじゃあ、25日」
「…………………っ」
逸はこの上なく渋い顔をしたが、文字通り喉をごくりと苦しげに鳴らしてその条件を飲んだ。
「今日は一日目に入りますよね?」
「入んねーよバカ!明日からだ!!」
「ちぇー……」
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