褒めて伸ばして

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ーー本音を言えば、期待しないではなかった。 もしかしたら目を瞑ってくれるのではないかとーー 結果から言えばただの皮算用だったのだがーーーー 揃って床に入ると、数分と待たず敬吾はことりと落ちるように眠ってしまった。 それはもう一も二もなく安心しきった、子供のような表情で。 (罪な人だよなあーーーーほんっとにーーー………) その頭を撫でても寝息ひとつ乱れない。 いつもならば寝入り端はもう少し眠りが浅いのだが。 (疲れてんのかな…………) そう少し心配にはなるが、やはりじっと顔を見ていると。 (チューしたい…………) 思ってしまった瞬間に、その感触が呼び起こされる。 唇の柔らかさ、舌の温度、間近に感じる呼吸。 あれが欲しい。 「ーーーー………」 唇がひりつくようでそれ以上見ていられずに、逸はそっと体勢を変える。 さすがに敬吾が小さく不思議そうな声を漏らし、起こしてしまったかと振り返るも相変わらず平和そうな表情のままだーーが。 何かしら不満そうな顔をして逸の腹あたりを引っ掴む。そしてそのまま、逸の背中に顔をつけた。 「っ………………!!」 背中のスウェット生地が敬吾の呼気を含んで暖かくなっていく。 それが質量を持って逸を押しつぶしていくようだった。 「ほんともー……勘弁してくれよ…………」 必死に目を瞑ってはみるものの眠れるはずもなく。 深呼吸をしてみたり、素数を数えてみたりと足掻きに足掻いてーーー 結局逸はまんじりともせず長い夜を過ごしたのだった。
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