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「おはようございまーす」
「おはよー」
タイムカードを押す逸を、幸は仕事の手を止めて見つめた。
「逸くんどうかした?」
「え?」
「最近元気ないよね。だるそう」
「あー……」
逸は苦笑した。
確かにここのところ体がだるい。
気持ちにもいまひとつ張り合いがないので怠惰にも見えるだろう。
理由はもちろん幸が心配するような不調ではなく、単に自己処理のし過ぎだーー
間違いを予防する意味ももちろんだが、何よりも、処理せずに敬吾に会うととても辛い。
それが嫌で必要以上にしてしまっている。
ーー結果、この無気力である。
(セックスとオナニーってなんでこんな違うんだろうなー……)
どうしても、胸中に独りごちてしまう。
「今日はちょっと寝不足。スマホゲームにハマって」
「あー。今日力仕事だよ、大丈夫ー?」
幸は仕方がないなあとでも言いたげに苦笑した。
逸も自らに呆れていた。
「大丈夫大丈夫、棚がえの続きだよね」
「つっても敬吾さんが昨日今日でかなり進めちゃったんだけどねー、乗ってる時にガンガン行くとか言って」
幸が店の見取り図を指し示す。
進捗具合を表す赤ペンのチェックが、ほとんどの箇所に施されていた。
「えっ、こんなに!?嘘でしょ!!」
「敬吾さん最近元気だよねー」
その言葉に、逸はずんと沈んだが幸はからからと笑っている。
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