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逸は何も言わずにただそうしていたが、その間敬吾の肋骨はまだ痛んでいて、牽制しようにもその機を逸してしまった。
なんだろう。
なんなのだろう、このいかにも恋人ですいちゃついていますとでも言いたげな状況はーーーーー
ーーーー………耐えられない。
「っなあ岩」
敬吾がろくすっぽ見ていなかっただけで、映画はエンドロールに入っていた。
それを待っていたように、逸が敬吾にくちづける。
(出遅れたーーーー!!)
敬吾が自分のまぬけさにくしゃっと顔を歪める。
逸は当然気付くはずもなく、その間抜けづらの唇を思う存分啄んでいた。
濡れた音がして、敬吾がまた顔をしかめる。
自分より体温の高いその舌先が。
入ってくるのはなにか縮図のようなものを感じさせてーー逸とのキスが嫌だというわけでは決してないのだがーーまだ、敬吾を緊張させる。
敬吾は思わず逸の肩を押していた。
「ちょ、岩井」
逸は何も言わなかった。
そのまま、温かい手が敬吾のシャツをくぐる。
「っ、やめ、やめやめやめろって」
「駄目ですか?」
「だ、だめですか?!!?」
ーーずいぶん直接的だな!
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