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「ーーお前さ、なんかあったか?」
「え?」
ベッドに腰掛け、敬吾は風呂から上がって来た逸を見上げてそう言った。
逸はぱちぱちと瞬いた後ふっと目を細める。
その微笑みも妙に大人びていてーーいい年をした男にそんな感想も妙なものだがーー敬吾は内心眉根を寄せた。
逸は無言で敬吾の隣に腰を下ろす。
「どうしてですか?」
「っ、いや、なんとなくーー」
ぐっと近寄った逸の顔に敬吾は俯いてしまいつつ、息を詰めた。
その圧迫感も、肩に回った腕もいちいち力強い。
思ったとおりにまた強く唇が触れる。
逸は答えるつもりはないようだった。
ほとんど反射で敬吾の瞼が落ち、すっかり甘くなった唇が啄み合う。
それが僅かに深くなり、吸い付く合間に逸が敬吾を呼んだ。
敬吾が何も応えられずにいると、腰に腕が下り耳元に逸の唇が触れる。
「……疲れちゃいました?」
「ーーーう、いや……」
また逸は何も言わず、口付けながら敬吾をベッドに押し伏せた。
頬へ、喉へと唇で這ってふいと敬吾を見上げると、眉根を寄せて何か言いたげな顔をしている。
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