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ーー自分はまた、この人を困らせている。
悲しげに笑い、それでも熱に抗えずーーいや、抗おうとせず。
逸は敬吾の手を封じ、届くところ余さず食み、舐めた。
泣いているような敬吾の呼吸が胸を圧迫する。
「…………っちょ、……っいち……………っ」
敬吾の肌はもうどこに触れても切なげに引きつり、声は涙と速い呼吸を含んで滲んでいた。
ーーもうこのまま、溶かしきってしまいたい。
自分の腕の中で。どこへも行けないように。
「敬吾さん………」
敬吾の手を離し内腿に口付け、跡を付けて、逸の唇はそのまま脚を下った。
「ゃ………、」
小さな悲鳴のような声は聞こえないふりをし、逸は足首の腱を食んでくるぶしに口付けた。
それがまた先へと腱を辿っていくと、敬吾の背中がぞくりと震える。
「……っ逸っ!ちょっ、待てっ」
今度は完全にそれを無視し、逸は強く足首を掴んで指の間に舌で割り入った。
「やっ!やめろ、って………っ」
また黙殺される不安と濡れた音、ざわざわと背中まで震わせる感触が敬吾の頬を赤くする。
「逸!……ほんとにっ、」
やっと唇は離れたものの、逸は人質のように足を掴んだまま敬吾を見下ろした。
その妙に冷たい、挑発的な薄い笑みに敬吾は眉根を寄せ、肩を縮める。
「ーーーーーっ?」
「じゃあ、敬吾さん」
「へ……っ」
「俺のこと、蹴って止めて」
「ーーーー」
「昔みたいに………」
「………!」
敬吾が言葉を失うと逸はまた鷹揚に笑いかけ、その足の甲に、ゆっくりと唇を押し当てた。
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