祝福と憧憬

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耐え難い羞恥心は、いとも容易く快楽への期待で上塗りされる。 体中に滞留しきった快感が、ぞくぞくと這い回って強く主張を始めた。 「んんっ…………」 「敬吾さん……………」 優しく口付けられ、それだけで昇り詰めそうになってしまって敬吾は慌てた。 「んっ、な、かで、逸のでっ、………」 「ーーーーーー」 逸は物も言わず深く唇を噛み合わせると、鋭く中を抉った。 その途端敬吾の体が引きつれ、激しく腰が跳ねて圧し殺された嬌声と呼吸が暴れる。 肩に深く爪が食い込み、敬吾の呼吸が危ういほど細く速くなっても逸は腰を振るのをやめなかった。 と言うより、やめられないのだ。 体が勝手に敬吾を突き上げ、穿って、もっと深くに注ごうとする。 悦ばせようと、壊そうとする。 「んっ、んっんっんっーーんぅっ…………!」 「ーーーーーーー」 敬吾の体が弛緩し始め、長々と吐き出されていた精液が止まり始めた頃やっと、ゆったりと重く揺さぶる。 膨らみ切った乳首を強く潰すとまた悲痛な声が口移しで響き、耳が溶けてしまいそうだ。 敬吾が堪える熱量の一部を共有する逸の背中は血が滲んでいる。 「っは…………」 敬吾が逃げるように顔を背け、今際の際のような危うい呼吸を繰り返す。 それでも尚揺らされながら、自分の中で逸が痙攣するとその頭を撫でた。 「敬吾さん…………」 どうしようもなく愛しく、満たされていて、逸はまた敬吾の唇にかぶり付く。 いつまでこうしていられるのだろう。 柔らかく応えていた敬吾の唇から力が抜ける。 舌もゆるゆると戻っていき僅かに顔を離すと、敬吾はもう意識を手放していた。 頭の中に胸の奥に甘い液体でも流れるようだった。 それが逸を酩酊させ、思考はもう朦朧としている。 言うだけならきっと許されるだろう。 泣き出しそうに顔を歪めた逸が、縋るように敬吾の髪を掻き上げた。 「ーー敬吾さん……、ーー俺と一緒にいてください」 「……一生、ここにいて……………」 血を吐くような懇願は、誰に届くこともなく薄闇に滲んで消えた。
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