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「あーーー……」
「あーって」
このカップルは揃いも揃って、と後藤は苦笑してしまう。
自分でも驚くほどの微笑ましい気持ちだった。
「岩井くんちょっと一杯付き合わない?俺奢っから」
後藤の提案に、逸は率直に不愉快そうな顔をする。
さっきからこの男は、何を勝手にくだけているのだ。
「付き合いませんよ。俺連れと来てるんで………ああ、来た」
後藤の背後に、こちらを伺っている同級生を見つけて逸が手を上げる。
後藤もなんとなくそちらを振り返ると、どうもびくりと震えたようだ。
「いや!いっちその人と行っていーよ!」
「へ?」
「俺は全然いーから!!」
「…………………。」
憔悴しているような笑顔の友人をぽかんと見返し、どうやら背後で後藤が笑ったような気がして逸はひくりと口の端を引き攣らせる。
全くもうとでも言うように後頭部を掻き、逸は友人に拳を差し出した。
「じゃーこれやる。ピック」
「えっ。えっマジでぇ!?」
「おー」
むっつりとそう言い、軽く手を上げて振り返ると、やはり後藤は笑っている。
「怖がらせちゃったかねー」
「………………。」
逸に向かって苦笑すると、来るだろう?とでも言いたげに無言のまま後藤は振り返り、そのまま歩き始めたのだった。
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