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「何にする?」
「アルコール入ってないやつで」
「あれ、下戸?」
仕方なく後藤の隣に腰を下ろしながら、逸は曖昧に首を振る。
「酒癖悪いんで」
「ふーん………体が受け付けないとかではなく」
「そーです」
無愛想に逸が頷いているうち、後藤はカウンターの奥に向かってビールとノンアルコールのカクテルを注文していた。
(ここバーだよなあ)
イメージよりはカジュアルな雰囲気だが、こんな格好で入ってよかったのだろうか、と逸は少々不安になる。
ラフなのは後藤も変わらないので良いだろうが、逸の方はさんざん暴れたので汗だくだ。
さすがに首にタオルはまずかろうと一応取っておく。
「はい、乾杯ー」
後藤が黄金色の瓶を掲げる。
仕方なくそれにグラスを当てて青味がかった炭酸を一口呷った。
「あ、うまい」
思わず逸が零すと後藤は笑う。
「岩井くんてほんと素直だよねぇ」
「はいー?」
「いやいや……、腹へんない?なんか揚げ物作ってー、あとピザ」
色のない逸の視線はものともせず、フードを注文した後後藤は瓶を完全に傾けて同じものを求めた。
豪快だなとぼんやり思いながら、逸は半ば減ったグラスを置く。
その逸に、後藤は空気を正すように半身に向き直った。
「一度ちゃんと謝りたいと思ってたんだ」
「ーーーはい?」
逸の目が睨め付けるように後藤を流し見る。
後藤は小さく苦笑した。
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