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敬吾が複雑な気持ちでいると逸がバランスを崩し、二人揃ってそこに崩れ落ちた。
半ば下敷きにされた敬吾が呻く。
この男、遠慮なく体重を掛けると見た目以上に重い。
「岩井、重てえ……ちょっと頑張ってころがれ」
「んん……………けーごさんー………」
「わかったから、っとにもー!」
なんとか逸の下から這い出るものの、逸はまだ敬吾の腰に抱きついたまま。
玄関に残ったままの膝下をなんとか手繰り寄せて靴を脱がせると、敬吾は逸の頭を一発張った。
「岩井起きろ!お前かなり汗かいただろ、風呂入れ」
「んん…………」
曖昧に唸ったきり、逸は敬吾の腹に頬ずりするばかりで口を開かない。
敬吾は渋い顔をして乱暴に頭を撫でた。
「お前聞こえてんな?」
「………………。」
「……ったく……」
構ってほしくて仮病を使う子供そのものだ。
なにやら可愛らしいような気もしてきて、半ば呆れながらもやはり敬吾は頭を撫でる。
「………岩井、風呂入るぞ。頭洗ってやるから」
「!」
腕立て伏せよろしく機敏に体を起こすと、逸は真剣な面持ちで立ち上がりよろよろと浴室に向かっていく。
思わず笑ってしまい、敬吾も付かず離れずその後を追った。
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