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今の自分には、辛いなどという言葉は当てはまらない。
心も体も雑ざりあってひと塊になり、それが熱く膨張しているような。
今にも崩壊してしまいそうな、そういう、ひどく憐れなひとつの存在だった。
それでも酷な接触が無くなり僅かにでも射精感が引いてくると、驚くほどに状態は落ち着いた。
人の形を取り戻して、五感にも余裕が戻る。
そうして大きく呼吸をすると、逸がふと笑った。
生殺与奪を握るような、敬吾を好きにしている感触は酒より激しく逸を酔わせる。
「敬吾さん、イキたい?」
微かな平穏の中もたらされた逸の言葉に、敬吾はそれを振り仰ぎ必死に頷いた。
一挙に体が期待してしまって逸に吸い付き、それが快感を産んで声が溢れる。
また泣きたくなった。
相も変わらず逸は醜悪に笑っているが、抱き潰してやりたい一方で全て捧げてしまいたくなるから倒錯している。
「……じゃあ、一緒にいきましょうね」
「へ……………?」
ぐっと腰を押し上げると、敬吾の瞳が逸を捉えたままに細く細く潜められてあまりにも切ない。
「俺がイく時、離しますね」
「ーーーーーー」
やたらあどけなく笑う逸の顔を、敬吾はただ呆然と見上げることしかできなかったーー。
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