酔いどれ狼

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「あーー………、もう……………」 空き缶でも蹴飛ばすような投げやりな気持ちで、敬吾はただそう呻いたきりまた黙った。 激しい痙攣がやっと止まった体はすっかり弛緩して、腹から胸から自らの精液に濡れている。 目には左腕が乗せられていて表情が読めないが、壮絶なほどの快感に曝されたらしい体はただそこにあるだけで美しかった。 食い入るように逸がそれに魅入っているかなり長い間、敬吾は呼吸以外の何もしない。 やっと金縛りの解けた逸が汚れたその胸に口付けても、気怠そうにピクリと肩を揺らしただけだった。 「敬吾さん綺麗、ほんとに綺麗………………」 「…………………」 敬吾が自分でも信じられないほど多く出たそれを逸は舐め取っているらしい。 その舌の這う感触に、やっと敬吾は心肺以外の部分を動かした。きつくきつく眉根が寄る。 (変態………) 敬吾にどう思われているかなど知る由もなく、逸はきれいに浚いきってしまった。 そのまま敬吾の上に重なり、両手を掴まえて指を絡める。 敬吾は久しぶりに、本当に久方ぶりに人心地ついた気がした。 ついさっきまでは気が触れてしまいそうなほど身も心も張り詰めきっていたのだ。 首すじを優しく舐められ、とろりと瞼が落ちる。 逸はそのままキスだけを繰り返した。 敬吾が細く零す声に、逸は「今度は優しくしますね」と宣う。 怒るでも驚くでもなく、敬吾はただ呆れたように眉を下げた。 「……まだ……、する気、かよ」 掠れきった敬吾の声に逸が苦笑する。 「すみません、意地悪しちゃって…………」 「………………」 「慰めさせて下さいーーー」 優しい声と口づけに、敬吾はもう受諾も拒絶も出来なくなっていた。 ただぼろ切れのように疲れた体を、這う唇に癒やされていく。 その心地よさに浸ることしか、できなかった。
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