意識の彼方で

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「ーーああ、まあ酔ってる時も言わないことはないですけど」 「?」 遠回しな言い方に敬吾が首を傾げると、逸が目を合わせてまた笑った。 「してる時にめちゃめちゃ言ってますよ」 「んぁ?」 「セックスしてる時に」 「…………………」 「嘘じゃないですよ?」 そう言っていたずらっぽく笑う逸の顔が、楽しそうではあるがからかっているものではなくて、擽ったそうでーー ーーかえって羞恥心を煽られる。 「い………、っいやいやいやいや嘘だ!言ってねえよ!!」 「本当ですってばー、覚えてない人が何言ってんですかー」 「お、覚えてないからこそ言ったもん勝ちじゃねーかそんなの!」 「ああ」 言われてみればそうか。 しかし敬吾の反応は、本当だと分かっているからこそのもののような気がする。 その顔を近くで見るべく敬吾の隣に移動して、伸し掛かるように覗き込むと敬吾はもう茹でだこもいいところ。 「そうですね、あんだけトロトロになってたらね………敬吾さんは何も分かりませんよね」 「………………はあ!!?」 「あんななってる敬吾さんにすきーって言われたら俺だってちょっと満足しちゃいますよ」 「いや、ちょっ……待て、」 「あっじゃあ実験してみますか?俺敬吾さんにちゃんと覚えててねって言いますから」 「うるせえよ!黙れ!!」 「録音してもいいしーーー」 「っあーーーもーーーー!!!」 敬吾は本気で怒るがそれが子供の癇癪のようで、逸は心底楽しげに笑っていたーー。
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