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充足感がやんわりと体を押して、逸は敬吾の上に覆いかぶさった。
指を絡め唇を合わせると敬吾が眠たげな声を漏らす。
「敬吾さん………」
「んーー………」
呼びかけられて見上げると、逸はやはり今にも片膝を落としそうなほど恭しい笑顔を浮かべていた。
言わずとも触れられたいところに触れて、あんなに激しい快感を与えて、翻弄して………
主導権を握っているのは、自分の全てを掌握しているのは、逸のはずなのに。
それでどうして、そんな顔をするのだろう。
感覚的な疑問は浮かんだものの、抜け切らない快感が意識を蝕んで言葉にできなかった。
そうして敬吾が朦朧としているうちに、逸はまたその目元に口付け涙を舐め取る。
徐々に下っていって精液も舐めてしまうと、鼠径に腿にと更に唇は滑っていく。
敬吾と言えばぐったりと体を投げ出しているばかりで、それでも施される愛撫がやはり奉仕を感じさせ、敬吾の疑問はいや増した。
が、やはりまだ体が動かない………。
「いち……」
掠れているが窘めるようにどうにかこうにか声を振り絞るが、逸はそれを聞かない。
敬吾の脚を持ち上げて足首まで唇が這っていく。
「あしは……、やだって……」
見ていられなくてなんとか手の甲を額に載せる。
翳って狭まった視界の中で、逸が鋭くこちらを向いた。
厳粛なほどに精悍な顔がまた目を伏せて、足の甲に口づける。
「んー……」
敬吾が呻くとまだ押し当てられている唇が生意気に笑った。
ちらりと舌の感触がした後強く吸われてやっと唇が離れていく。
「やめろよ……、もー…………」
「ダメでした?」
「へんたい………」
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