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「どうなりますかね」
「何が?」
「柳田さん」
「?」
「と、後藤さん」
「………………?」
帰りに買ってきたちまきにかぶりついたまま、敬吾は瞬き、その後首を傾げた。
逸はこれでもかと眉を下げる。
「ほんとに気付きませんでした?」
「あにが」
「完全に惚れてたでしょあれは………」
「んぇえ?」
敬吾は訝しげに眉根を寄せ、とりあえずは一旦ちまきを頬張って、難しい顔をしたままもぐもぐ言わせた。
(ハムスターみたい………)
「……………。………………えー……?あの人が?後藤にー?」
「そうですよー」
またもやたら大振りに頬張る敬吾を、逸は孫でも見るようににこにこと眺めている。
敬吾はやはり難しい顔のまま、ゆっくり飲み込んだ。
「えーー、そうかぁ?憧れられただけじゃね?あいつそういうのは得意だし」
「ほんっと敬吾さんはそれ系鈍いなー」
「あー?」
「俺ほんとは、後藤さんの連絡先教えに行ったんですよあの時」
「えっなにしてんだよお前」
逸は悪びれもせず笑っている。
「まあ断られましたけどね?て言うか断られるだろうなとは思ってましたけど…」
「お前…………」
一体何をしているのだ、この馬鹿犬は。
こんな野次馬な男だったろうかと思いつつ、窘めるような視線を敬吾が投げると逸は困ったように目を合わせた。
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