襲来、そして

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「やっぱいるじゃん!なんで早く出ないのよー」 「ーーいや、トイレ行ってた……つ、ぅか……なにそれ………………」 玄関先では、ぷりぷりと頬を膨らませている桜に敬吾が対峙していた。 その敬吾は呆然と顎を落としている。 ーーなぜなら、桜の腹がこんもりと膨れていたから。 「えっ!!?……………えっ!???」 「七ヶ月でーーす」 「はぁーーーーー………??」 一言たりとも聞いていない。 敬吾の驚きぶりを見て、桜は心底満足げに笑っていた。 これがしたくて訪ねてきたのだろうかと思うものの、敬吾の訝しげな目は桜の持っている大きな荷物を睨む。 「めでたい……けど……その荷物なに………?」 途端に、長く引き伸ばされていた桜の唇がきゅっと収束した。 全力で、不機嫌です!と主張している。 「マサと喧嘩した!しばらく泊めて!」 「………………。」 ーー頭痛がするようだ。 敬吾が額を押さえているうち、桜がまた楽しげに笑う。 「ねえねえいっちーは?呼ぼうよ!」 「……………ちょーーど遊びに来てますけど」 「えぇっ!?ちょっと何早く言ってよもうっ!」 言うなり桜は敬吾を押し退け、荷物も持たせて、妊婦とは思えない機敏さでリビングへと入っていった。 さて、逸のクールダウンは間に合ったのかどうか。 相当がっかりしていたようだから大丈夫だとは思うが。 さっそく暴風域になっている台風の目付近へと、とりあえずは敬吾も向かっていった。
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