襲来、そして

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「やっっぱり言い始めたかそーゆーこと」 「あ、驚かないんですね」 「まあなー……」 他に人影のない休憩室で、逸は昨日のことを話していた。 さすがに手籠め云々は言わなかったが。 驚きはしないものの、敬吾はやはり面倒臭そうに寄った眉間を擦っている。 逸としては、応援してもらえるのは嬉しいが不思議でもあった。 桜が個人的に自分を気に入るのはまだ分かる。 そもそも桜は人間自体が好きなのだろうーーだがそれを自分の弟とまとめようなどと普通思うだろうか。 自分が女の子ならともかく。 そうして二人が思いは違えど同じように首を傾げていると、揃って携帯が鳴った。 予想通り、桜である。 「おいしいシュークリーム買ってきたからいっちーも食べに来てね!夕飯はハンバーグですっ!だそうです」 「……………そーか」 逸に続いて敬吾も携帯を取り、簡単に返信した。 同じく返信を打っている逸の顔をちらりと見上げ、それが少し面映そうなのを見てなんとなく気持ちの底に澱が溜まるようだった。 姉のことが嫌いなわけでは決して、……恐らく、無いがーー ーー早いところ、落ち着いて欲しいものだ。
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