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「ん……………?」
ーー体が重い。
夢でも見ているのだろうか、この薄い熱気と感触は見知ったものではあるのだが、寝起きには有り得ないものでもある。
やはり夢だ。
こんなこと、あるわけがない……
そう思い、逸は僅かに開いていただけの瞼を擦ってきちんと目を開いた。
そうして自分に跨っている影を見上げ、ふわふわと笑う。
「………敬吾さん、何してるの?………」
逸が優しく問いかけると影はびくりと頭を上げた。
「や………っ!」
「気持ちい?」
「あ……っごめ、………っ!」
「……?」
謝らなくてもいいのに。
慰めるように内腿を撫でてやりながら、逸は怪訝そうに目を細める。
自分の作り出した夢なのに、敬吾を落ち込ませてしまうとは。
「んーー………?」
ごしごしと両手で顔を擦り、更に訝しそうに眉根を寄せながら逸は体を起こす。
僅かずつにでも明るくなってくる室内で、影も鳥目なりに鮮明に見えるようになってきた。
逃げようとーーつまりは繋がっているそこを抜こうとーーしている敬吾を捕まえて、よりよく見ようと顔を寄せる。
真っ赤な顔を今にも泣き出しそうに歪めて、恥ずかしそうに申し訳なさそうに俯いていた。
「……ん?ええ………?ーー現実?………」
「……………!」
敬吾がまたびくりと肩を縮める。
「………えっうそ、嘘でしょ敬吾さん何してーー」
「……………っ!!」
「あああごめんなさいっ、泣かないで泣かないで俺怒ってるわけじゃないですからむしろ嬉しいですから!!!」
沈み込んでしまいそうなほど深く俯いた敬吾に、逸はあわあわと弁明しながらその肩を抱き寄せた。
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