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ぐちりと嫌な音を立てて腰を揺らされ、不意をつかれた敬吾が鋭く声を上げる。
その恥ずかしさに逸の首をまた強く抱き込んでーー逸が堪え切れない笑みを漏らした。
「……敬吾さんもここで気持ちよくなっていいんですよ」
「………!?何言っ」
「良がったらエッチな子みたいではずかしいなあって思ってたんですか?」
敬吾が呆然と声と表情を失った。
「可愛い………」
首すじに吸い付かれ、腰から体全体を揺すぶられて敬吾の顔が泣いたように歪む。
今の今まで世界の音響設備が壊れてでもいたのかと思うほど、あまりに突然にあの粘着質で激しい音が再開する。
「………っ!?やめ、 ………っ!!」
「やめません……今日は」
「っ…………馬鹿、っも……っ」
「ここ、ね?気持ちいいのは変なことじゃないですよ」
「しなくていい……っ後ろでいき、たいとか、言ってない、だろ俺!!」
「じゃあ俺の願望ってことでいいですよ、敬吾さんのせいじゃないです、変なとこで感じるようになっちゃったのも、後ろでいけそうなのも全部俺が悪いです」
「っ馬鹿にして、ん、のかっ」
「してないですよ、事実ですし」
「っ、……っ……!何が、したいんだお前っ………っ」
「まーたそんな愚問を」
気が触れそうだった。
暗闇に火でももたらすように明確に、突如として逸が放って寄越した真実に、目が眩む。
認めなければきっと我慢できたのに。
力づくで自覚させられたから。溢れそうになってしまっている。
「敬吾さんを………」
藻掻くように呼吸をするばかりでもう口を開けない敬吾に、逸が追い打ちのように二の句を継ぐ。
「……俺のでいかせたいだけです、まさか本当に分かんなくて聞いたわけじゃないですよね」
ーーああ、もう……。
ぼんやりとそうとだけ考えて、敬吾はただ逸の首にしがみついた。
逸しかもう、頼れるものがない。
この荒波のような雪崩のような快感の中で。
その混沌の中に、激しく火花が散る。
その先はもう覚えていなかった。
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