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逸の興奮をそのまま音にしたような性急で重いバックルの音。
ーーその内側を自分がどう思うものか懸念が走って、敬吾は少し顔を背けた。
逸は困ったように笑っている。
「……手、こっちください」
優しげな声で言う逸は、とりあえず敬吾がそこを見ないのは許容してくれるらしかった。
視界の外で右手がそこに触れるとーー見ていないだけに、触覚に頼らざるを得ない情報量が圧倒的だ。
そこに左手も加えられ、いつまでも顔を背けているのも逆に変態的で敬吾がおずおずと逸を見上げる。
柔らかく笑った唇が降りてくると、閉じた視界ながらどうやら敬吾の両手を逸の右手が更に掴みまとめたようだった。
ーーその中を、逸のものがスライドする乾いた音がした。
「ん………」
どちらのものか分からない吐息が落ち、全ての音が徐々に加速していく。
熱くなっていく自分の手に、敬吾は苦しげに顎を引いた。
僅かにそれを追った舌でそのまま濡れた唇を舐め取りながら、逸は空いた手で敬吾の額を撫でる。
「敬吾さん……もうちょっと、きつく」
「ん……」
吐息交じりに囁かれると、従う以外の選択肢は無いに等しい。
甘えるようなその響きに敬吾の手は締め付けるだけでなく緩急を付けた。
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