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素直なおねだりに、それがしっかり体に浸透するのを待つように逸はしばし無言でいた。
その間敬吾が体を起こし、不安げに眉を下げる。
「……ごめん。だめ?」
「!!!!」
やはり子供のように尋ねられ、逸は一気に我に返って顔を上げた。
「まっ、まさか!!あんまり可愛いから魂抜けてましたっ」
そう言われて少しは安心するが、敬吾としてはやはり身勝手なことを言っているようで気後れはしている。
遠慮がちなその顔を見て微苦笑し、逸は改めて優しく敬吾の手と腹を拭いた。
「……俺は、敬吾さんがして欲しいことならなんでもしますよ?」
今度は遠慮からではなく照れて俯く敬吾がやはり可愛らしい。
自分のことなど好きに扱えばいいのに、ここまで深く晒し合ってもどこか慎む敬吾が好きだった。
「敬吾さん」
「…………っ」
「……嬉しいです。俺も、敬吾さんの中入りたかった………」
「ーーーーー」
逸の手が、敬吾のパーカーの中に入って肩を撫で脱ぎ落とさせていく。
その視線に曝されるだけで肌がひりつくようだった。
敬吾が無意識に手の甲を口に当てると、逸が柔らかく苦笑する。
そうして自分が先にシャツを脱いだ。
「……なんか緊張しますね」
「ーーーうそつけ」
「ふふ」
生意気な気遣いひとつで、敬吾の戸惑いを含んだ空気も逸の手に握られる。
やはり申し訳なく、やや悔しいような気もするのだがーー
敬吾は諦めて、それに甘えることにした。
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