逃亡、降伏

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「……………なんででしょうねー??」 「考察すんなっつうの」 ーー結局、敬吾が危惧した事態にはならなかった。 敬吾としては厄介なプレゼンでも滞りなくやり過ごしたような、安堵や達成感の類を感じていたのだが。 逸はーーなにも敬吾が嫌なことをするつもりはないがーー不思議なような、少し残念なような。 「……前ほど気持ち良くなかったですか?」 湯上がりの敬吾を膝の間から出してやらずに抱き締めて、そんなことを聞いたりなどしている。 「…………っそ、そういうわけじゃ……」 「んん…………」 「つ、つーか俺あれはあんまりって言ってるだろ!そう追及すんなっ」 「………そうですけどー」 今度は少し率直に残念そうな声を出し、逸は敬吾の肩に顎を乗せた。 のの字でも書くようにいじけた様子で腹を撫でられ、敬吾は少々警戒するような顔をする。 「……俺も敬吾さんが嫌なことをする気はないですよ?でも、怖くなるほど気持ちよかったってことですよね?」 「!!」 「だからね、俺もし敬吾さんが物足りなくなっちゃったらどうしようって……」 「なっ!無い無い!!!」 衝撃の発言に、敬吾は腹を抱きかかえられながらも大いに驚いて振り返り、手を振ってみせた。 「充分だから!充っっ分だから!!その向上心は別のとこにとっとけ!!!」 「……………なんつうか、あれですね嬉しいんですけどちょっと色気に欠けますね?」
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