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「……………ぅ、」
目覚めてもなお、逸の腕は敬吾に巻き付いていた。
後頭部の髪を揺らす逸の吐息をぼんやりと聞きながら、敬吾はのんきに(ちょっと腹減ったな……)と考える。
考えるだに恥ずかしいが昨夜は大分長いこと抱き合っていて、しかもかなり甘く一方的な奉仕を受けた。
その逸相手に、起きるなり「腹減った」と言うのは憚られる……。
(飯くらい炊いとくか……)
敬吾は細心の注意を払い、そうっとそうっと逸の腕から抜け出そうとするがーー
ーーこの男、寝起きは悪いくせにそういうことには敏感だ。
不満げに呻きながら逸は腕を回し直す。
少しは意識もあるのか、更に強く抱き寄せながら敬吾の項に口付けている。
「ぃ……岩井ちょっとだけ離せ、米研いだら戻ってくっから」
「ん…………こめ……?」
「うん、すぐだから………!」
返事の途中でまた抱き竦められ、敬吾の息が詰まった。
わしわしと敬吾の髪に頬を寄せながら目を覚ましているらしく、逸の呻きは徐々に言葉らしくなってくる。
最後に大きく息を逃して、やはり敬吾を抱き直す。
「……おれがやりますから、そんなのー」
そうは言うものの声は掠れているしかなり眠たげだ。
「いいって。寝てろ」
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