来ちゃった!

29/30
6714人が本棚に入れています
本棚に追加
/1199ページ
「……………ぅ、」 目覚めてもなお、逸の腕は敬吾に巻き付いていた。 後頭部の髪を揺らす逸の吐息をぼんやりと聞きながら、敬吾はのんきに(ちょっと腹減ったな……)と考える。 考えるだに恥ずかしいが昨夜は大分長いこと抱き合っていて、しかもかなり甘く一方的な奉仕を受けた。 その逸相手に、起きるなり「腹減った」と言うのは憚られる……。 (飯くらい炊いとくか……) 敬吾は細心の注意を払い、そうっとそうっと逸の腕から抜け出そうとするがーー ーーこの男、寝起きは悪いくせにそういうことには敏感だ。 不満げに呻きながら逸は腕を回し直す。 少しは意識もあるのか、更に強く抱き寄せながら敬吾の項に口付けている。 「ぃ……岩井ちょっとだけ離せ、米研いだら戻ってくっから」 「ん…………こめ……?」 「うん、すぐだから………!」 返事の途中でまた抱き竦められ、敬吾の息が詰まった。 わしわしと敬吾の髪に頬を寄せながら目を覚ましているらしく、逸の呻きは徐々に言葉らしくなってくる。 最後に大きく息を逃して、やはり敬吾を抱き直す。 「……おれがやりますから、そんなのー」 そうは言うものの声は掠れているしかなり眠たげだ。 「いいって。寝てろ」     
/1199ページ

最初のコメントを投稿しよう!