可能選択肢

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「えっ」 「デコがすげぇ赤い」 「あっ、ああ……」 そういえばさっきドアにぶつけたのだった。 額を撫でながらまだ笑っている敬吾を見つめる。 ーーそれほど機嫌悪そうには見えない……… が、調子に乗るのは非常に危険だ。 「敬吾さん、……大丈夫でした?」 「………はあ?」 調子に乗らずとも出方を間違えたようだった。 さきほどまでの甘い追想など吹き飛ばされてしまう。 「や、あの、ほんとすみません」 「いや謝るのも変だろなんか……」 「おお俺っとりあえず病気は持ってませんから!!」 「…………。お前はもー……」 どうやら懸命に誠意を見せているつもりらしい逸に毒気を抜かれてしまって、敬吾は呼吸を逃がした。 強くはないが優しくするつもりも別段なく逸の頭に手を乗せると、逸は滑稽なほど肩を縮めていた。 「別にそれ自体に怒ってるわけじゃねーよ、言えっつーのせめて。俺初心者なんだから」 「うう、はい……ですよね、すみません」 「んー…。」 敬吾は気難しげに目を瞑り、少々顔を傾けて首すじを撫でる。 何を言われるのかと逸は恐々としていたが、敬吾が言ったのは「腹減った」だった。
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