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「なんかすげーな」
「せめてもの償いでございます」
「……。いただきまーす」
しばし、ふたりは黙々と朝食を食べた。
逸はばれないように時折敬吾の顔色をうかがっている。
「……お前さ」
「はいっ」
逸が驚いたようにぴんと背を伸ばし、その真摯過ぎるとも思える反応が、また敬吾の口を重くさせた。
こんなに美味しい朝食を食べながら思い悩みたくはない、と思いながらも、更に憂鬱になってしまったらどうしようと案じた危惧そのものである。
「……敬吾さん?」
なかなか口を開かない敬吾に逸の背中が緩み、首が傾げられる。
敬吾は箸を持ったまま器用に頭を掻いた。
「…………んーーーあのさ、なんか……なんつーかお前俺に気使いすぎじゃない?」
「へ?」
「恐縮してるっつーか……びびってる?っつーか……」
敬吾が探す言葉を一緒になって探すように、逸は瞬きながら考えた。
ーー気を使っている?それは当然そうだ。それがなにか、気に障ったのだろうか。
少々呆けていたからか、逸はそれを口に出してしまっていることに気付かなかった。
そして、それまで努めて穏やかにしていた敬吾が少々苛立ったように「だからそれが」と受ける。
そして、すぐさま反省したように俯いて深く息を吐き出した。
「気ぃ使ってるのがダメだったのかなって気にするって、相当だろそれ……………」
呆れたように敬吾は言うが、逸には心底不思議だった。
「えっ?はい、………えぇ??」
「なんでそこまで下手に出んの?年下だからか」
「それもあるとは思いますけど……え?なんだろ、考えたこともなかったから分かんないんですけど」
「うん。考えろ」
「えぇ」
「こっちだって気ー使うんだよ、使われると!店でなら先輩後輩だからとか分かるけど」
「あー……」
そう言われてまたも逸は考え込む。
そんなにも畏まっていただろうか。
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