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「意識してやってたわけじゃないんであれですけど……実際俺敬吾さんのこと尊びまくっちゃってますからね、自然とそうなってたのかもです」
「尊ぶなよ………」
敬吾はぐったりと頭を落とした。
どこにでもいる大学生相手に何を言っているのだ、この男は。
「やーだって敬吾さん凄いじゃないですか、俺最初の頃敬吾さんのこと正社員の人だと思ってましたもん」
「人手不足でシフト入りまくってたからってだけだろそれ」
「いやいや、仕事もめっちゃできるじゃないですか、大体のこと敬吾さんに聞いたらわかるし」
「ただの古株だからだって………つーか、そっちはいいんだよ別に。教えられたりフォローされたりなら別にある程度下手に出んのは分かる、そーじゃなくてだなー」
敬吾が言葉を探す間、逸はまた首をかしげる。
「……こうやって変に申し訳ながるのはなんか違うだろ。なんか言ってて思ったけど、昨日言った妙に女の子みてーな扱いされんのにも通じてるわこれ」
「はい?」
「お前が俺を何だと思ってんだか知らないけど、そんな可愛いもんでもねーし、尊ばれるようなもんでもねーの。落ち着かないから必要以上に腫れ物扱いすんな」
そこまで言って、敬吾は卵焼きを取り落とした。
「え?俺腫れ物扱いされてんの?」
「してませんよ」
流れで言っただけの言い回しが妙に的を射ている気がして少々ぞっとしたけれども、ごく平坦に否定されて終わった。
「でも俺敬吾さんに付き合ってもらえたのすげー奇跡だと思ってるんですもん、調子乗ったらバチあたります」
「はー?」
心底呆れたように、敬吾はまた卵焼きを落とす。
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