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「奇跡ってお前大袈裟な」
「大袈裟じゃないですよー、敬吾さん最初俺のこと大っ嫌いだったじゃないですか」
「んなことねーよ。使える新人ダイスキ」
「逆に冷たいっすわ」
お供え物のように、逸は敬吾のコップにお茶を注いだ。
「俺未だに忘れられませんよ、あの虫でも見るよーな目……凍るかと思いましたよ」
「そんな目してねーよ、目つき悪くてすいませんねー」
「しましたってば。俺目覚めるとこでしたもん」
「目覚めるも何もお前生粋のマゾだろ」
「えぇ!?違いますよ!!」
「違うのか?そうだと思ってた」
けろりと言い放ちながら納豆を混ぜる敬吾を、逸は幾分泣きそうな気持ちで見やっていた。
「だからですねー……敬吾さんだからなんですってば、いじめられても嬉しいのも!敬吾さんがどう思ってても多分その何十倍も好きなんですよ、そらもう蹴られたって好きだし気に食わないことはなにひとつしたくないんです」
「え、俺蹴った?」
「どこに食いついてんですか」
そして実際幾度となく蹴られた脛の痛みを思い出す逸であった。
その視界の端で、敬吾は何かしら気難しげな顔をしている。
これからわざわざ飯をまずくしてしまう気がして。
「んー……じゃお前的に、中出しは俺の気分を害することなんだ?」
「!!……ちょっと待って下さい、攻撃力が凄すぎる」
「…………。」
テーブルに肘を置いて俯いている逸はまるで怒りに震えてでもいるようだが、当然単に悶えているだけであった。
更に納豆を混ぜつつ、長閑に敬吾がそれを眺めている。
「いや……そりゃそうでしょ、中から俺のが出てきちゃうんですよ?ぶち切れじゃないですか」
更に生々しくなってしまった話に、敬吾も逸と同じ姿勢をとりたい気持ちになった。
自然、声も小さくなる。
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