飛んで火に入る酔っぱらい

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飛んで火に入る酔っぱらい

夜半過ぎ。 風呂上がりに台所で水を飲んでいると、玄関のドアノブががちゃがちゃと不穏な音を立てた。 驚いてドアを注視すると、ノブは大人しくなった。 が、続いて、鍵穴が擦られる音がする。 当然合鍵の存在は頭を過るが、時間が時間である。 そしてこの手こずりよう。ピッキングでもされているのかと思うような雑音だ。 今からでもドアガードを立てようかとそっと歩み寄ると、破裂でもしたようにノブが回ってーー 「ーー敬吾さん?」 「おす……」 「こんばんは……………」 強く酒が香る。 そういえば今日は飲み会だと言っていたか。 「どうかしました?飲み過ぎちゃった?」 「んん……」 どちらとも取れない返事をする敬吾の額を撫でながら、逸は思わず笑ってしまった。 先ほどまでは少々肝が冷えたしその前は眠かったが。 普段のどちらかと言えば冷たい表情とは似ても似つかない敬吾の顔を見ていると、ただただ愛しくなる。 どれだけ親しい相手にも、連絡なしにこんな夜中に押しかけてくるような人ではないのだ、この恋人は。 「なにか食べます?お茶漬けとか」 「んー……」 またもよく分からない唸りだけで答えて、敬吾は逸のうなじを捕まえた。
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