行く末

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行く末

「敬吾さんと逸くん、何かありました…………?」 「えっ」 ぽそりと幸に問いかけられ、敬吾が驚いて振り向く。 幸も敬吾の方を振り向くと、小さな悪戯を気に病んで告白する子供のような顔をしていた。 「え、なんで……っていうか前もあったなこんなこと」 「今回は割りと深刻に伺っております…………」 そう言って幸は雑巾を持った体ごと振り向いた。 敬吾としては気取られないよう注意していたつもりだが、どうやら異状なしではごまかせない雰囲気である。 「あーー……ごめん、やり辛かった?」 「いえいえ、そういうことじゃなくて。こないだあたしと店長が押し掛けたからかなあって」 「え!いやいや、違うから」 「気を使わないでくださいー、店長はあんなだから何も気づいてないんですけど、後から考えたらあれすんごい迷惑でしたよねーー、ほんとごめんなさいー!」 「違う違うさっちゃんほんと気にしないで!」 幸は変わらず失態の記憶に悶えているが、敬吾はぐっと息を飲んだ。 「気にしないで」はまずかった。 幸はこの通り勘が鋭いのだから。 「だってもうあたし見てらんないですよーーー!」 ぱくりと上げられた幸の目はやや涙ぐんでいて、敬吾はまたぐっと圧されてしまった。 「何があったかわかんないですけどー、あたしが代わりに謝るから許してあげてくださいよぉー!」 「え…………待って待ってさっちゃん、そこまで?そんな心配するほど?」 先ほどまでとはまた違う意味で平静を欠き、敬吾は少々焦って幸に問うてみる。 幸はまるで時代劇にでも出てくるような苦労人の母さながら肩を縮めていた。 それほどまでに思いつめさせるような有様だったのだろうか?
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