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逸は一人で夕飯を食べていた。 敬吾が一緒の時にはまずしないような、卵やウインナーを焼いて即席の味噌汁を溶いただけという手抜きにも程がある食卓。 だがたまに食べると妙に美味いから不思議だ。 なんとなれば白米に味噌や醤油があるだけでも十分だから、敬吾抜きの自分のものぐさぶりと言ったら甚だしい。 その敬吾は今友人たちと食事に出掛けている。 飲み会ではないとは言っていたが少しは飲んで帰ってくるだろう。 今日は、どんな酔い方なのかーー (いまいち読めないんだよな) 一時はキス魔なのだと思っていた。 キス魔というかスキンシップが増えるというか助平になるというかーー それだから嬉しくもあり心配でもあったのだが、どうやら一概にそうとも言えないらしい。 笑い上戸なこともあれば甘えたがりになることもあり、ただただ眠たがるだけのこともある。 やや残念ではあるのだが、毎度毎度欲情させられることもなく気軽に珍しい表情の敬吾を見ていられるのでまあ良いかと思うところだ。 ただ確実に言えるのは酔った敬吾はまず間違いなく無精者になることで、水も飲まずに眠ってしまったり着替えなかったり風呂に入らなかったりするのだ。 翌朝には元に戻っているしいい年をした男のすることだから放っておいても良いのだろうがーー そこはまあ世話をさせて下さい、と言うことで飲んだ後は逸の部屋に来るよう促して定着させている。 実際問題怪我をしたり風呂で溺れられたら目も当てられない。 そんなわけで、敬吾は今日も「今から帰る」と律儀に逸に連絡を寄越していた。 あまりに酔っ払っていると連絡なしに帰ってくることもあるが。 了解した旨返信をして、逸は食器を片付ける。 ほどなくして帰ってきた敬吾は、酔っぱらいと言うほどではないがほんのり気持ちが良さそうだった。
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