悪魔の証明

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悪魔の証明

敬吾は久しぶりに台所に立っていた。 店が混雑したらしく、逸から遅くなると連絡があったのでこんな時くらいはと夕食づくりを請け負ったのだ。 しかし、味も見た目も逸に出して恥ずかしくないものはほとんど作れないーー逸は恐らく気にしないだろうがーーので、献立はカレーとサラダ、顆粒コンソメを使ったスープである。 「ただいまっすー、うわ良い匂いする!」 「お疲れ。まあ、案の定のカレーですよ」 「敬吾さんの手料理とか、なんでも嬉しいですよ」 思った通りの発言をしつつ嬉しげに敬吾に抱きついて、その肩の上から逸が鍋を覗く。 と、見事にその腹が鳴った。敬吾が噴き出す。 いくら口で嬉しいとは言われても、こうも率直に体現されるとやはり敵わない。悪い気はしなかった。 「んじゃ飯にするか」 「やったー、……あ、今日敬吾さんにお客さん来てましたよ」 「え、誰?」 「名前聞いたら大した用じゃないからって言って帰っちゃったんですけどね。すげー背の高い……」 「ああ、後藤か」 「それだけで分かるんすね」 白米をよそいながら、敬吾は久しぶりにその顔を思い返していた。長いこと会っていないその男は、高校までの同級生だった。
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