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可能選択肢
敬吾はぼんやりとテレビを眺めていた。
逸の作った夕飯を食べ、片付けを手伝って、放映された映画がたまたまふたり揃って好きなタイトルだったので一緒に観た。
おそらくこのCMを最後に終盤を迎えるだろうなーーと思いながら、のどかなクオリティの地元企業のテーマソングを聞いている。
油断と言ってもいいほどの脱力ぶりだったが、躊躇いがちな声で逸に名前を呼ばれた途端、過冷却した水が凍結するようにぴしぴしと固まった。
ーーこの、普段にこやかでアホ面ばかりの年下の恋人。
その欲情指数をここ数日、声だけで判定できるようになってしまっている…………。
(ま、まあー犬とか猫も長く飼ってると考えてること分かるとか……言うしな………)
心中たらたらと冷や汗をかきながら、やはり始まったクライマックスを見届けるふりをする。
その後。ーーその後どうしたら。
その選択肢を狭めるために、逸とて声をかけたのだ。
「……敬吾さん?」
返事をしない敬吾に、逸が再び呼びかける。
「……………なんだよ」
集中して映画を見ています、とでも言うようにわざとぶっきらぼうに返すと、逸に手を重ねられた。
分かっているのに、驚いてしまう。
心臓があばら骨に重たい一発を食らわせていた。
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