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02個目「マチコさん」
休憩時間中のオフィス。おれたちはいつも同期三人で集まって仕事に関係のない話で盛り上がっていた。
今日は霧島が話題を持ってきた。
霧島 中山峠、出るんだってな。
近藤 出るって、なんだよ
霧島 出るったら、あれだろ、あれ。おばけ。マチコさん。中山峠のマチコさん。
小林 ちょっとやめてよ……
近藤 おばけって、そんなんいるわけないっしょ。
霧島 見たことあんのか?
近藤 無いから居るわけないんだって。
小林 もういいでしょ、私あっち行くね。
霧島 見たことないなら居るかもしれないだろ。
近藤 暴論だな。
霧島 そこまで言うならマチコさん見に行こうや。今夜。
近藤 明日も仕事だろ。
霧島 怖いんだろ。
近藤 は? じゃあ行くよ。
霧島 小林さんも誘ってこうか。
小林 行きません!
近藤 あれ? 聞こえてたの?
霧島 まぁ、誘えばくるっしょ。
仕事終わり。俺たちは霧島の車で中山峠に行くことになった。メンバーは霧島、おれ、小林の三人だ。小林はおれが誘ったら仕方なく付いてきた。
霧島 結局来たじゃん。
小林 私のバカ……。
近藤 けっこうすぐ来るよな。
霧島 見えてきたぞ。あの峠だ。
近藤 おいおいカーブミラーも何もないじゃんか。
小林 これじゃあ事故も起きるって……
近藤 事故の霊なのか?
霧島 おばけ。信じてないじゃなかった?
近藤 流れだよ流れ、信じてる体で会話しないといちいち議論になるからな。
霧島 それより小林さん、よくここが事故多発体だって知ってたね。下調べした?
小林 ねぇ、やっぱり帰りたい。
霧島 ここまできてそりゃないってー。進むよ。
小林 お、おろして。私ここで待ってるから!
近藤 え、そのほうが怖くない?
小林 い、いいの。私行きたくない……
近藤 霧島、小林は降ろしてあげよう。
小林 ありがとう。
霧島 わかったよ。じゃ、小林さん、戻ってくるまでここにいてね。
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