02個目「マチコさん」

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 車から降りた小林は、真っ暗な峠に一人取り残される形になってしまった。おれはおばけなんて信じていないつもりでは居たが、冷や汗が止まらなかった。 近藤   峠、超えたな……。 霧島   マチコさんはいなかったな。 近藤   ああ……。 霧島   あのトンネルがクライマックスだ……。 近藤   ……。 霧島   いくぞ……  バゴォン!!  何かがボンネットに当たる音がした。 霧島   な、なんだ! 近藤   何かひいたんじゃないか!? 霧島   い、いや、そんな感覚はなかった。  バゴバゴバゴ。  音が増えた。 近藤   お、おい。 霧島   お、お音だけだ  バゴバゴバゴ。  おれは音のする方をおそるおそる見てみた。 近藤   ッ……!  おれは後部座席の窓にへばりつく髪の長い女を見てしまった。 近藤   霧っ、し、まぁ…… 霧島   し、ししら知らねぇ! 近藤   ま、ままマチコ、さんっ?  おれは気がついた。霧島はとっくにバックミラーで見てしまっているのだと。そして必死に見なかったことにしていることに。 近藤   ふりおとせ! 霧島   う、うあおをおあおおっ!  アクセル全開で制限速度を大幅に超える。  ガグンッゴッゴッゴッズザザザザザザザザ  今度は明らかに振動として車に伝わった。 近藤   なななんなんだよぉ 霧島   ひ、い、いただろ、お、おばけ、いただろ! マチコさんだよ! 近藤   い、いたいたいた! 居たから! 信じるよ! もうやめてくれ! マチコさんおれが、おれが悪かったから!  ズザザザザザザザザザラララザララザザザザザザ  猛スピードでトンネルを抜けた霧島はすぐに急ブレーキをかけた。そうしないと急カーブで曲がりきれずに真っ逆さまだからだ。 霧島   うううわわわわわっ 近藤   と、とまれとまれ!!  ザザザザザザズザザザザザザザザザザザザ  ガックン……と車はギリギリのラインで停車した。 近藤   は……はぁ…… 霧島   …… 近藤   …… 霧島   見てきてくれないか…… 近藤   ……い、いやだ……  ずっと何かを引きずっている音は聞こえていた。おれも霧島も気がついていたのだが勇気が持てない。
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