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「その……場当たり的な言い草、やめて貰えますか。ヤらせて貰えればそれでいい……。今のあなたの言葉には何の感情も見いだせない。失礼しますっ」
「藤原っ!」
バタンッと叩きつけるように閉められたドアをじっと見つめていた颯真は、その場に座り込んだまま項垂れた。
きちんとセットされた髪は乱れ、ブランド物のスーツも皺だらけになっている。
自身がどれほどの思いで彼に懇願したのか……。
「何も分かってない……」
握った拳を床に数回叩きつけて、目尻に滲んだ涙を指先で乱暴に拭うと、颯真は勢いよく立ち上った。
残された時間はわずか……。
ここで諦めたら、何でも完璧にこなしてきた自身のプライドが許さない。
「絶対に藤原を抱く! 俺は絶対に――っ」
誰もいない資料室に力強い声が響く。固い決意を表すかのように拳を握り、ガッツポーズで立ちつくすのは営業部きってのイケメンエリート。
難攻不落と言われる案件ほど闘志を燃やす彼の気質を、より煽ってしまったことなど知る由もない美弦。
彼は、いろいろな意味で……最低・最悪なセクハラ上司を敵に回したことを、あとで後悔することになる。
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