スチール缶を倒したら

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必修科目の四時限目 最後列に陣取って あくびを無理矢理飲み込んだ 私語の嵐の向こう側 淡々と紡ぐしゃがれ声 ふせたレジュメをかき寄せて 眠るに眠れず夢うつつ スローモーションの秒針 何もかもから逃げ出して 今じゃこんな場所で一人きり 黒かった肌は白くなり 追い詰められることもない 惰性で通う毎日と だるさに沈む鉛の身体 私がひたすら跳んだ頃 いつも何かに追われてた 重力も汗も世界さえ 何もかも全て振り切って 早く逃げたいと願った 砂にまみれて転がって あんなに自由だったのに 机の端の赤い缶 汗を流して立ち尽くす スチール缶を倒したら ぱちぱち弾ける炭酸も 宙へ向かって飛べるかな 閉じ込められた部屋の中 気づいたときにはもう遅い
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